オクターブの共鳴音

アクセスカウンタ

zoom RSS 「日本語 表と裏」 森本哲郎 著はおもしろすぎる

<<   作成日時 : 2005/01/26 00:01   >>

トラックバック 1 / コメント 4

画像
とあるblogで紹介されていた「森本哲郎」

そのblogでは「そして文明は歩む」を紹介していたんだけど、どうも本やさんでみあたらない。
そこで、買ってみたのが新潮文庫の「日本語 表と裏」というもの。

森本哲郎・・・・・1925年東京生れ。東京大学文学部哲学科、同大学院社会学科卒
在学中より戦後唯一の風刺雑誌「VAN」編集部に勤め、卒業後東京新社会部記者に。その後朝日新聞社に入社、’76年に辞職。’88〜’92年東京女子大学教授 現在文明評論家

日本語 表と裏
日本語の「あいまいな言葉」
よろしく、やっぱり、虫がいい、どうせ、いい加減、いいえ、お世話さま、しとしと、こころ、わたし、気のせい、まあまあ、ということ、春ガキタ、おもてとうら、あげくの果て、かみさん、ええじゃないか、もったいない、ざっくばらん、どうも、意地、参った参った、かたづける

というような言葉を考えることで、日本人の心性、日本人の論理、総じて日本の文化をかえりみる。それによって、日本的性格の一端をあきらかにすることをこころみる。表がその言葉をあらわすタテマエだとするならば、裏にはその民族のホンネがかくされているはず。この本の目的は、日本語のそうした表と裏を探る事にある、とのこと。

上記の単語を見てどうでしょうか?
意識せずに使っているものが多いですよね。
「よろしく」とか「やっぱり」とか「どうせ」「気のせい」「ということ」「もったいない」・・・
あまりに普通にいつもつかっているので、その言葉自体の意味は?と、聞かれても答えられない。それを、説明しているのですが、実におもしろいです。筆者の語り口というか、文章運びが実に楽しく、読んでいてこんなに楽しい本は久しぶりのような気がします。

少し長くなりますが、抜粋しましたので「やっぱり」についての部分をご覧ください。
「やっぱり」

日本語の会話のなかで、いちばんよく使われるのは「やっぱり」あるいは「やはり」という言葉ではあるまいか。ー中略ーむろん、ほとんどの人はこの言葉を意識して使っているわけではない。無意識のうちに、ただ何となく口にしているにちがいない。かくいう私自身、思わず口に出てしまうことが多い。ー中略ーなぜ私がこの慣用語を気にし始めたのかというと、じつは、知り合いのアメリカ人にその意味をきかれたからなのである。−中略ー
予想通り」といった意味でつかっていることはたしかのようである。私はしばらく考えたすえ、as you knowというのがいちばん近いのではないか、とこたえた。そういえばアメリカ人もふた言目には You know? という間投詞をさしはさむではないか。それとおなじだと教えたのである。ところが、彼は納得しなかった。アメリカ人のよく使う You know という言葉は、読んで字のごとく「あなたはご存じでしょう」ということであり、自分がしゃべっていることがらを相手が知っているか、もしくは理解しているか、それを確認しつつ話しを進めているのであって、日本語の「やはり」とはニュアンスがちがう、というのである。−中略ーよく考えてみると、やはりと you know とでは、やはりどこかニュアンスがちがう。日本語の「やはり」には、as you know と同時に、as I expected すなわち、私が思っていたとおり、という意味もふくまれているからである。−中略ーで、私は彼にそう説明した、すると彼は目をまるくして、こういった。「ほう、そうなんですか。してみると、日本人はみな予言者なんですね。何でも初めからわかっているんですから。わかっているから、やっぱりを連発するんでしょう」
ー中略ーそう、日本人の特質は、つねに何かを予想し、予期しているということなのである。それはある種の運命観といってもいい。日本人はいつもその予感のなかで生きているのだ。このことは、おそらく日本という風土、その自然環境と無関係ではあるまい。−中略ー

しかし、「やっぱり」にはもうひとつ、社会的な背景がある。それは日本の社会が世界でも珍しいほどの同質社会であることだ。−中略ーそのような暗黙の合意が成り立つというのも、この国が同質社会であるゆえだ。同質社会には同質社会なりの圧力があるのだ。その圧力とは、おなじでなければならぬ、ということである。−中略ー日本人が何かについての意見を聞かれたときに、やたらに「やっぱり」や「やはり」を連発するのは、「私が思っていたとおり」という預言者的な、つまり、自身に満ち溢れた立場の表明ではなく、「あなたをはじめ、みんながそう思っているように」「世間一般の人たちが考えているように」自分もそう思う、という意味の「やっぱり」なのだ。だから、マイクを差し出されて意見をただされたときに、ほとんどの人が「やっぱり」をつい連発してしまうのである。それは無意識のうちに世間におうかがいを立て、自分の意見がけっして人並み外れた考えではなく、世間のみなさんとおなじように自分もそう考えます、ということを弁明する強調詞だといってもいい。だとすれば、数多くの日本語のなかで、「やっぱり」、あるいは「やはり」という慣用語こそ、何より日本的な性格を正直に告白している言葉といえないであろうか。


ああ〜、なるほど!やっぱりそういうことだったんですね〜。
って、やっぱり使ってるじゃん!
って、使わないでしゃべるのって無理・・・・・?(笑)

この本の解説を、国語学者の金田一春彦氏がしているのですが、「行文は流れるごとく、論理は明快で、巻を開いたら覚えず何ページも読み続けてしまう出来である」と書いています。私も、一気に読んでしまいました。そして「日本語の授業の折、知っていれば役立つ知識であること疑いない」とも書いています。言語を理解することは、その国の文化を理解することでもあるとは知っていましたが、日本人がどのような性格を持つ民族なのか、ということを分かり易く説明してくれていることで、日本語を理解するためにも有益な本です。
そして金田一春彦氏は最後に「私は著者の『ぼくの作文学校』という本を読んだことがあるが、この種のことを書いた本でこんなにいい本はない。子供のころ作文の苦手だった著者が、専門の文章書きになるまでの略歴が、小説のような仕立てで実におもしろく書いてある。これは是非読んでごらんなさいと、この機会に読者各位にお勧めしておく」という言葉で結んでいます。

「そして文明は歩む」とともに「ぼくの作文学校」も是非呼んでみたくなりました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・私も、子供のころ作文が苦手だったもんですから(笑)




日本語 表と裏 (新潮文庫)

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

トラックバック(1件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
日本語表と裏
日本語 表と裏 森本 哲郎 画像が無いので 何を言っているのかわからないとは思いますが、 この本の帯の「日本語ができる方は、本書をぜひお持ちください」 という煽り(?)に惹かれて買ってしまいました。 ...続きを見る
竜田山
2005/12/15 23:07

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
こんにちは。
森本哲郎の著作は、ちょっと数えてみただけでも102冊。
最近は、ちょっと時間がある時に気分転換に「私(わたし)のいる文章」を愛読中。森本哲郎氏の作品を一気に読んでみたいとも思うけれど、なんだかもったいなくて・・・彼の作品はJDサリンジャーの作品ごとくゆっくりと読んでいます。
走るぬりかべ in busy
2005/01/28 22:42
こんにちは。
森本哲郎の著作は、ちょっと数えてみただけでも102冊。
最近は、ちょっと時間がある時に気分転換に「私(わたし)のいる文章」を愛読中。森本哲郎氏の作品を一気に読んでみたいとも思うけれど、なんだかもったいなくて・・・彼の作品はJDサリンジャーの作品ごとくゆっくりと読んでいます。
走るぬりかべ in busy
2005/01/28 22:42
ぬりかべさん、こんにちは。
走りながらもカキコしていただいて、ありがとうございます(笑)
私もこの人の作品を一気に読んでしまいたい衝動にかられました(笑)
「私のいる文章」ですか?それも、探してみますね。
味わいのある文章と言ったらいいのでしょうか。ゆっくり堪能するのが正しい楽しみ方なんでしょうね(笑)
オクターブの共鳴音
2005/01/29 09:09
ぬりかべさんへ。
「私のいる文章」見つけましたわ(笑)
新品では新潮文庫の索引を見ても載っていなかったので、
古書店で見つけました。あ〜、読むのが楽しみ!
オクターブの共鳴音
2005/02/08 21:44

コメントする help

ニックネーム
URL(任意)
本 文
「日本語 表と裏」 森本哲郎 著はおもしろすぎる オクターブの共鳴音/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる