「踊るサテュロス」葡萄酒と享楽の神バッカスの従者ーイタリアの至宝をみる


ギリシャ神話を題材にとった作品はだいたい好きなんですけど、それプラス私の好きな古代ギリシャ彫刻とあっては、これは観に行かなくては!と、いそいそと行ってきました。

『踊るサテュロス』は、1998年にイタリア南部シチリア島沖で、漁船の網に掛かり、2000余年の眠りを覚まし、奇跡的に発見された古代ギリシャのブロンズ像だそうです。

「サテュロス」は、ギリシャ・ローマ神話に登場する「森の精」で、葡萄酒と享楽の神バッカスの従者です。
※バッカスの妻はアリアドネ→以前の記事「アテネ:神話と日常の結びつき!」に絵を載せてあります。

酒に酔い、有頂天に舞い踊るサテュロスが、まさに跳躍しようとする一瞬を捉えた像で、ものすごい躍動感でした。今にも、動きだしそうな気がします。





バレエを踊る方はご存知のようにピルエットをきれいに行うためには、垂直で安定した回転軸が必要です。そして、ピルエットを開始するとき、軸足とは反対の足で地面をけると同時に上半身をひねり、そのことによって回転の推進力を生み出します。そして、両腕を大きく広げて回転方向に回転軸を先導するように振り、回転が開始した時点で腕を縮め、胸元に収納する・・・・・平衡感覚を失わないように、回転中は一点を見つめ目が回らないようにする。

『踊るサテュロス』はそのような動きを見事に現し、頭部も斜め後方にあり、後頭部の頭髪は回転で生じる風になびいています。
そして!ぼんやりと見開いたそのサテュロスの眼は、明らかに回転運動の中で自失の状態というよりは・・・・・酒に酔い、踊りそのものの行為に没頭し、エクスタシー(法悦)状態になっているというかんじ!「博物誌」を記した大プリニウスが、ディオニュソスとサテュロスたちの群像をプラクシテレスが製作し、その中のサテュロスは興奮のあまり「叫び声をあげる者(ペリボエトス)」という名前をつけられた、と伝えているところからも、まさに「ペリボエトス」に合致するブロンズ像であるかのよう。



近くで実物を観た瞬間こみあげてくるものがありました。 
2000年以上昔につくられた作品で、しかも海の底に沈んでいたものなのに、その無くした腕や脚の先の動きまでを想像することができ、今にもジャンプしてクルクルと回転し、享楽の叫びをあげて踊りまわる様までが、目の前に浮かんできました。

そして、この特別展ではサテュロス像のレプリカが大中小と作られてあり、自由に触れるようにもなっています。目の見えない人たちも触ることで、そして見える人たちも触ることでその質感を感じ、この美術品のすばらしさを味わってほしいという、考えからだそうです。
勿論、私も触ってきました(笑)
ものすごい凹凸の激しさで、「う~ん、日本人とは違う体型・・・」とか、当たり前のことを思ってしまいました(笑)でも、これを無の状態から創りあげる人の感性がものすごいなぁ、と。

もうすぐ始まる「愛・地球博」(愛知万博)のイタリア・パビリオンでの公開に先立ち、東京国立博物館で特別展示されている、この門外不出の美術品がイタリア国外に持ち出されるのは今回が初めてで、おそらく日本での公開はこれが最初で最後の機会となるもよう。

2005年 2月19日(土)~3月13日(日)東京国立博物館 表慶館(上野公園)

海底に2000年以上も眠っていたために、ガラスのように脆い状態のサテュロスを動かす許可を得るために1年以上もかかったそうです。
多分、日本では二度とみることのできない、このすばらしい作品を是非ご覧になってくださいませ。

※この記事を書くにあたり特別展で販売されているパンフレットを参考にさせていただきました。




この記事へのコメント

JIN-RHYME
2005年02月24日 19:15
おこんばんは。
素晴らしいですね!無くなった手足がかえって想像力をかきたてます。大臀筋もビルドアップされていて、本当に躍動感を感じますね。これが2000年も前の物とは思えません。
漁船の網にひっかかる、2000年の眠りから覚めた、なんてジョジョみたい!今に動き出すのではなかろうか・・・。(目が光ってるし!)
オクターブの共鳴音
2005年02月24日 19:30
お~、JINさん、こんばんは!
JINさんの記事のどれかに、TBかけようかな~とか思ったんですけど^^。
(または記事中にJINさんの名前を出すか(笑))
ね~!すごいですよね。実物は本当に圧倒されました。
JINさんには、是非見てもらいたいな、って思いましたよ~(愛知万博でもいいですけど^^)。
2000年以上も前のものだなんて、信じられない。え?ジョジョもそういうシチュエーションなんですか???
いや~、マジに動き出しそうでしたよ。観に行って良かったと思いました。魂が揺さぶられる感じ・・・という表現があってるかな・・・。
Tak
2005年02月26日 10:59
こんにちは。
コメント&TBありがとうございました。

「Sさん」の感想レポートといい、こちらの記事といい
読み応えありますね。
私のような適当な感想とは大違いです(^^ゞ
深くキチンと観られるようになりたいです。
オクターブの共鳴音
2005年02月26日 11:20
Takさん、こんにちは。
こちらこそ相互TB&コメントありがとうございます。

いえいえ、マティス展のTakさんの記事を読んで、私も触発されたんですよ~^^。
ものすごく好きなものに対しては、深く読み取ることができるのでしょう。
これからも、Takさんの記事を参考にさせていただきますよ~^^。
もとよし
2005年03月02日 22:44
はじめまして。先日サテュロスを観て来た者です。
バレエを知る方のご感想、とても興味深く読ませて頂きました。
こういった見方の出来るオクターブの共鳴音さんが羨ましいです。
私のような、「ただ見ただけ」のレポートとは訳が違います。(笑)
オクターブの共鳴音
2005年03月02日 23:20
はじめまして、もとよしさん、TB&コメントありがとうございます。
いえいえ、単に雑学が多いだけでして^^;
でも、この「踊るサテュロス」は、本当に観るものを圧倒させますよね。
期待以上のインパクトに、観に行ってよかったと思いました。
愛知万博では、どんな見せ方にするのかも、ちょっと気になるところですよね。
DADA.
2005年03月08日 22:08
はじめまして。
サテュロス展の記事を探していてこちらにたどり着きました。

バレエの知識はないので、こちらの記事を拝見して勉強になりました。
こういう知識があると、小さな筋肉の表情のひとつひとつも見応えが出てくるのだろうなぁ、とうらやましい限りです。
まだ見つかってない両腕のさき、手にはやはり盃を抱えているのかな、と、こういう稚拙な想像はするのですが・・・。

TBさせていただいたので、よろしかったらご覧ください(大変恐縮ですが・・・)。
オクターブの共鳴音
2005年03月09日 23:16
DADAさん、はじめまして。TB&コメントありがとうございます。

素直な気持ちで「わー、なんかすごい!」で、いいのだと思います。
見るものに何かを感じさせる(想起させる)のが「本物」なんだと思いますし(笑)
また、よろしくお願いいたします~。
晴薫
2005年05月24日 22:10
オクターブの共鳴音さん、こんばんは。
この記事のTBは送ったつもりで勘違いしていました。
私も触ってきましたよ。
障害者の方にも配慮した処置は大変良かったと思います。

TB、コメントを送る時期が大幅に遅れてしまって、なんだが、間が空いてしまいましたが、サテュロスはまだ日本に滞在中ということなので、どうかお許しを。
2005年05月24日 23:29
晴薫さん、こんばんは。
いえいえ、TB&コメントありがとうございます。
愛知万博でも、このサテュロスのためにイタリア館が一番人気と以前ニュースでやっていましたが、今でもそうなのかしらん?でも、万博ではどうディスプレイされているのか、ちょっと見てみたいですよね。二度と日本では見ることができないのでしょうから。

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